トヨタの高級ミニバン、アルファードとヴェルファイアが、VIPからファミリー層まで注目されています。新型ヴェルファイアには2.4リッター直4ターボエンジンを搭載した「Zプレミア」スポーツグレードが登場し、その走りを試乗しました。
ヴェルファイアらしさを大切に
最近、都心でも新型アルファード/ヴェルファイア(アルヴェル)をよく見かけるようになり、注目を集めています。高級ミニバンは本来、欧州の伝統的な高級車を好む美意識とは異なる存在でしたが、今では日本のフォーマルシーンではアルヴェルが当たり前の存在となりました。さらに、新型アルヴェルのレクサス版である新型「LM」が欧州でも販売される予定です。これに対して、メルセデス・ベンツSクラスのオーナーからの興味も高まっています。
今回の試乗車はヴェルファイアですが、当初はヴェルファイアの廃止が検討されていました。しかし、トヨタの国内販売形態が変わり、双子車戦略に根拠がなくなったため、ヴェルファイアが残されることになりました。ヴェルファイアのユーザーからは強い支持があり、その性格を際立たせる必要性が生じました。そのため、アルファードの一部のバリエーションをヴェルファイアに移し、独自の乗り味を追求することになりました。
走行・静粛性が格段にUP?
ヴェルファイアの中でも、2.4リッター直4ターボエンジンを搭載したZプレミアは、アルヴェルの中で最もパワフルなモデルで、先代の3.5リッターV6に代わるエンジンとして位置づけられています。新型では、ヴェルファイアがドライバーズミニバンとしての役割を強調しているため、この「T24A-FTS」型エンジンはヴェルファイア専用です。実際に走行してみると、2.5リッターハイブリッドよりも動力性能が印象的で、279PSの最高出力は先代V6の301PSにわずかに劣りますが、430N・mの最大トルクは約2割増加し、低回転域から力強く発揮されます。車重は約100kg増加していますが、前後の重量配分が改善されたことや、シャシーの進化により、ノーズヘビー感が払拭されています。
従来のT24A-FTS型エンジンはノイズが気になることがありましたが、新型ヴェルファイアは驚くほど静かです。アクセルを深く踏んでもエンジン音が非常に小さく、音質についてもあまり気になりません。パワートレイン自体の改善があるかもしれませんが、ヴェルファイアの静粛性が徹底されていることが明らかです。遮音・吸音はコストと質量がかかる分野ですが、この点においてもトヨタのアルヴェルが上位に位置していることが窺えます。
新技術や新機軸が多数導入され、アルヴェルがトヨタのフラッグシップと呼ばれるにふさわしい存在になっていることは明らかです。センチュリーを除けば、アルヴェルが事実上のトヨタのフラッグシップと言っても過言ではないでしょう。
安定性が実現された?
新型アルヴェルは、走行ラインが乱れず、低い重心と高い剛性を持つ基本骨格に、デュアルピニオン式のパワーステアリングを採用した「GA-K」プラットフォームをベースにしています。さらに、操縦安定性を重視したリアまわりの強化が際立っています。具体的には、フロアの構造用接着剤をセカンドシート下には減衰力の高いタイプを使用してフロア振動を抑制し、それより後方のリアまわりには別のがっちり型の高剛性タイプを使い分けています。リア床下には、スーパーカーのカブリオレから着想を得たV型ブレースが組み込まれています。
ヴェルファイアでは、ドライバーズカーとしての特性を強化するために、19インチタイヤ、周波数感応型ダンパー、およびフロントコアサポート部分の強化ブレースが全車に標準装備されています。19インチタイヤはヴェルファイア専用で、周波数感応式ダンパーはアルファードの最上級グレード「エグゼクティブラウンジ」にしか使われないものです。また、コアサポート強化ブレースもヴェルファイア専用の追加仕様です。
ヴェルファイアにおいて、ハイブリッドモデルよりも軽量でありながらパワフルな2.4リッター直4ターボエンジンを搭載した試乗車は、操縦性と機動性が非常に高いレベルにあります。ステアリングは非常に正確で、リアは常に安定しているため、ハンドリングにこだわるドライバーも十分に満足できるでしょう。走行ラインは振れず、安定感が素晴らしいです。
乗り心地は前型と同様?
新型ヴェルファイアの特筆すべき点は、周波数感応式ダンパーにあります。これは細かいブルブル振動をソフトに吸収する一方、大きなうねりやコーナリング時の入力には高い減衰力で応じる設計です。このダンパーは高速でのフロア振動を抑制し、高G領域では車の挙動を安定させることを意図しています。実際、ヴェルファイアの走りはこのダンパーの効果を実感させるもので、路面にしっかりと接地している感覚があります。また、路面の凹凸に応じてスロットルを微細に自動制御する「バネ上制振制御」の採用も貢献しているかもしれません。
この優れたシャシー性能は、自動運転機能で走行する際にも実感できます。特に修正舵制御が非常に少ないため、ヴェルファイアの運転は安定感があり、非常に滑らかです。セカンドシートでも、ブルブル振動は完全には解消されないかもしれませんが、以前と比べて軽減されています。アルファードのより柔らかい調整の17インチタイヤを装着したモデルでは、ブルブルはさらに減少しますが、その代わりに上屋の動きが大きく、唐突に感じることがあります。
個人的な好みに応じて、セカンドシートに座る立場ならヴェルファイアが、ステアリングを握る機会がある場合は2.4リッター直4ターボ搭載モデルが選択肢になります。2.4リッター直4ターボ搭載モデルはZプレミア以外には用意されていないことが少し残念ですが、それでもシート骨格は上級のエグゼクティブラウンジと共通で、快適な装備が充実しています。セカンドシートの快適装備はZプレミアでも充実しており、十分に満足できるでしょう。
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